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コーチングとカウンセリングの使い分け
2025年10月10日

「今の相談者には、コーチングとカウンセリング、どちらのアプローチが適切なのだろう」
実際の面談で、この判断に迷った経験はありませんか。両者の違いを理論的には理解していても、目の前のクライエント(相談者)にどちらを使うべきか、瞬時に見極めるのは容易ではありません。
目次
根本的な違いを理解する
コーチングとカウンセリングの最大の違いは「クライエントの現在地」です。
カウンセリングが必要な状態
- 心理的な苦痛を抱えている
- 過去の経験に囚われている
- 自己理解が不十分
- 感情的な安定を求めている
コーチングが効果的な状態
- 具体的な目標がある
- 行動する準備ができている
- リソースを持っている
- 前進したい意欲がある
簡潔に言えば、カウンセリングは「マイナスをゼロに」、コーチングは「ゼロをプラスに」するアプローチです。
見極めの実践的ポイント
1. 最初の5分で聴くべきこと
クライエントの第一声に注目します。
「つらくて…」「もうどうしていいか」→カウンセリング的対応
「○○になりたいんです」「チャレンジしたい」→コーチング的対応
ただし、これは表面的な判断。その奥にある真のニーズを探ることが重要です。
そのためには傾聴力が必要です。
2. 感情エネルギーのレベル
エネルギーレベルを1-10で見立てます。
- 1-4:カウンセリング中心(まず心の回復を)
- 5-7:両方を組み合わせる(状況に応じて切り替え)
- 8-10:コーチング中心(行動を加速させる)
3. 時間軸での判断
クライエントの意識がどこに向いているか。
- 過去に囚われている→カウンセリング
- 現在で立ち止まっている→両方の要素
- 未来を見据えている→コーチング
柔軟な切り替えの技術
実際の面談では、一つのセッション内でも両方を使い分けます。
典型的な流れ
- カウンセリング的導入(受容・共感)
- 感情の整理と自己理解の促進
- リソースの確認
- コーチング的な目標設定
- 行動計画の策定
切り替えのサイン
- 「でも、本当は…」→深層心理を扱うカウンセリングへ
- 「それで、どうしたらいいでしょう」→具体策を考えるコーチングへ
よくある誤解と落とし穴
誤解1:キャリコンはコーチングだけ
キャリアコンサルティングには両方の要素が必要です。
誤解2:カウンセリング=弱い人向け
自己理解は全ての人に必要な成長プロセスです。
誤解3:明確に分けなければならない
グラデーションとして捉え、柔軟に対応することが大切です。
統合的アプローチの実践例
【40歳営業職の相談例】
相談者:「転職したいけど、自信がなくて…」
- カウンセリング的受容:「自信が持てずに迷っていらっしゃるんですね」
- 感情の探索:「どんな時に自信を失いますか」
- リソースの発見:「営業で成果を出した経験は?」
- コーチング的展開:「理想の転職先はどんなところ?」
- 行動への橋渡し:「小さな一歩として何から始められそうですか」
使い分けの極意
コーチングとカウンセリングは「どちらか」ではなく「どちらも」。クライエントの状態に応じて、自在に使い分けられることが、プロフェッショナルの証です。
大切なのは、技法に囚われずクライエントを見ること。その人が今、何を必要としているのか。その答えは、クライエント自身が教えてくれます。私たちの仕事は、それを敏感に感じ取り、最適な支援を提供することなのです。