バブル世代へのキャリア支援——相談現場で知っておきたい基礎知識
2026年02月26日
資格取得の学習を進める中で、キャリア理論や面談技法を学んでいると、ふと疑問が浮かぶことがあるかもしれません。「実際の相談現場では、どんな方がどんな悩みを持って来るのだろう」と。
現在、相談者として増加しているのが、いわゆるバブル世代と呼ばれる50代後半〜60代前半の方々です。
「役職定年を前に、これからどうすればいいかわからない」、「若い部下と話が噛み合わなくなってきた」、「定年後もまだ長く働かなければならないのに、何も準備できていない」
こうした声は、この世代の相談者から繰り返し聞かれます。豊富な経験とキャリアを持ちながら、転換点を前に立ち止まってしまう——そのような方を支援するために、キャリアコンサルタントとして何を知り、何ができるかを整理します。
目次
バブル世代とはどのような世代か
支援を行うにあたって、まず相談者の時代背景を理解することが重要です。
バブル世代は、1987年〜1992年ごろに就職活動を経験した世代です。当時の有効求人倍率は1.4倍を超え、大卒者の多くが希望する大手企業から内定を得られる、いわゆる「売り手市場」でした。
1986年には男女雇用機会均等法が施行され、女性にとっても総合職としてキャリアを積む選択肢が広がった時代でもあります。
この世代に共通しやすい価値観・特性として、以下が挙げられます。
| 特性 | 背景 |
|---|---|
| 組織への強い帰属意識 | 終身雇用を前提とした職場文化の中でキャリアを形成 |
| 対面コミュニケーション重視 | 「飲みニケーション」など、人間関係を通じた仕事文化 |
| 長時間労働への慣れ | 働くことへの使命感・責任感が強い傾向 |
| ステータス・評価への意識 | 「会社での自分」がアイデンティティの中心になりやすい |
これらは否定されるべき特性ではなく、時代の中で培われたものです。支援者として、こうした背景を先入観なく理解した上で関わることが、信頼関係の出発点になります。
この世代が直面しやすいキャリア課題
役職定年・処遇変化への適応
多くの企業では、55歳前後を目安に管理職から一般職への移行(役職定年)が設けられています。これに伴い、役割・収入・職場での立場が大きく変わることがあります。
長年「管理職としての自分」を軸にアイデンティティを形成してきた方にとって、この変化は単なる人事上の問題にとどまりません。「自分は何者か」という問いに直面する心理的な転換点でもあります。
若い世代との価値観ギャップ
Z世代・ミレニアル世代との間には、働き方に対する価値観の違いが存在します。「会社優先・長時間労働」という経験をベースに持つ世代と、「ワークライフバランス重視」で育った世代が同じ職場で働く状況は、両者にとって摩擦を生みやすいものです。
「なぜ若い人はもっと頑張らないのか」「自分のやり方が通じない」という声の背景には、善意や責任感があることが多いです。支援者はその点を見落とさないようにする必要があります。
長期化する職業人生への不安
年金制度の変化により、70歳前後まで就労が求められる可能性が高まっています。定年後も15〜20年にわたる「第二の職業人生」を見据えた準備が必要ですが、何から手をつければよいかわからないという方が少なくありません。
キャリアコンサルタントとして押さえておきたい支援の視点
強みの可視化を支援する
バブル世代の相談者は、自分の経験を「当たり前のこと」として過小評価していることがあります。しかし実際には、バブル崩壊・ITバブル崩壊・リーマンショック・コロナ禍といった複数の経済的激動を現場で経験してきた世代は、若い世代にはまだない「生きた経験知」を持っています。
キャリアコンサルタントとして有効なアプローチは、これらの経験を丁寧に言語化し、相談者自身が「自分には価値がある」と実感できるよう支援することです。
具体的な問いかけの例
- 「これまでの仕事で、最も難しかった局面をどう乗り越えましたか?」
- 「後輩や部下に伝えてきたことの中で、今も大切だと思うことは何ですか?」
- 「振り返ったとき、自分が一番貢献できたと感じる場面はどんなときですか?」
こうした問いを通じて、相談者が自分の経験の意味と価値を再認識するプロセスが、支援の中核になります。
アイデンティティの移行を丁寧に扱う
役職定年や定年退職は、キャリアの終わりではなく移行です。しかし、強い組織帰属意識を持つ世代にとっては、「会社の中での自分」から「個としての自分」への転換が容易ではありません。
この段階で重要なのは、焦らせることなく、相談者のペースで新しい自己像を模索できるよう伴走することです。「次の仕事は何ですか?」という問いより先に、「今どんな気持ちでいますか?」と内面に向き合う対話が必要なことも多いです。
セカンドキャリアの選択肢を整理する
具体的な次のステップを考える段階では、選択肢を整理して一緒に検討することが役立ちます。
| 選択肢 | 概要 |
|---|---|
| 再雇用・嘱託 | 現職での継続勤務。環境の変化が少なく移行しやすい |
| 転職・転身 | 別の企業・業種での専門性活用 |
| 独立・フリーランス | これまでの経験・人脈を活かした自律的な働き方 |
| 社会貢献・教育分野 | NPO、ボランティア、人材育成など |
どの選択肢が「正しい」かではなく、相談者の価値観・生活設計・健康状態・家族の状況なども踏まえながら、現実的に考えられるよう支援することが求められます。
支援の段階的なイメージ
相談者のキャリア移行を支援する際、大まかな時期ごとに焦点が変わります。
| 時期の目安 | 支援の焦点 |
|---|---|
| 役職定年の2〜3年前 | 心理的準備・経験の棚卸し・生活設計の見直し |
| 定年移行期 | セカンドキャリアの選択肢の検討・具体的な計画策定 |
| 定年後の初期 | 新しい役割への適応・継続的なサポート |
あくまで目安であり、個人の状況によって大きく異なります。重要なのは、「まだ先の話」ではなく、早めに準備を始めることの意義を相談者と共有することです。
企業・組織側の動きも知っておく
キャリアコンサルタントの活躍の場は、個人との面談だけではありません。企業や組織の中でバブル世代がどのような立場に置かれているかを知っておくことも、相談者への理解を深める上で役立ちます。
現在、多くの企業がバブル世代の大量退職を前に、以下のような取り組みを模索しています。
- 段階的退職制度:急激な役割変化を緩和し、円滑な移行を支援する仕組み
- メンター制度:経験豊富な世代が若手を支える役割を担う制度
- 世代間対話の場:価値観の違いを対立ではなく、組織の資源として活かす取り組み
企業にとっても、長年培われた経験知の継承は長期的な価値を持つものであり、こうした制度整備が進む組織では、バブル世代が新たな役割を担う機会も生まれています。
相談者がこのような環境にいる場合、「組織から必要とされている」という視点を支援の中で共有することが、前向きなキャリア移行の後押しになることがあります。
まとめ
バブル世代の豊富な経験と知識を次世代に効果的に継承し、彼ら自身も充実したセカンドキャリアを実現できるよう支援することが、現代のキャリアコンサルタントに求められる重要な使命です。
仕事だけではなく、社会との関わりや生きがいなども含めて一緒に考えていく姿勢が必要です。資格取得を目指す今の段階から、この世代の背景と支援の視点を理解しておくことが、現場での実践力につながるでしょう。
監修者:CMCA理事長須藤和之
複雑化している社会において、キャリアコンサルタントとして、一人ひとりの生き方としてのキャリアに寄り添い、相談者が自分で納得できる答えにたどり着くまで伴走します。 今のままでいいのか迷う気持ちにも丁寧に向き合い、前向きに歩み出すきっかけづくりを支援しています。