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ミレニアル世代(1981-1995年生まれ)のキャリア支援:多様性と成長志向への対応
2025年08月01日
2025年09月26日

目次
労働力の主流となったミレニアル世代
「仕事もプライベートも充実させたい」「会社に依存しない働き方を身につけたい」「2年以内に転職を考えている」──現在20代後半から40代前半のミレニアル世代からの相談は、従来世代とは大きく異なる特徴を持っています。2025年以降、この世代が日本の労働力人口の半数を超えるという予測もあり、キャリア支援の現場では最も重要な対象群となっています。
ミレニアル世代は、デジタル技術の発展とともに成長し、リーマンショックや震災などの社会的激変を経験した世代です。彼らの価値観を理解し、効果的な支援を提供することが、現代のキャリアコンサルタントにとって急務となっています。
ミレニアル世代の特徴と価値観
デジタルネイティブ第一世代
ミレニアル世代は、インターネットやIT技術の発展とともに成長した初めてのデジタルネイティブ世代です。1996年頃から日本でもインターネットが普及し始め、パソコンやガラケー、スマートフォン、SNSの登場を青春期に体験しました。そのため、ITリテラシーが高く、変化に柔軟に対応できる特徴があります。
体験価値重視の価値観
物心ついた頃からモノが豊富な社会で育ったため、物質的な所有よりも体験や経験を重視する傾向があります。「モノ消費」から「コト消費」への転換を象徴する世代であり、シェアリングサービスを積極的に活用し、必要な時に必要なものを他人とシェアすることに抵抗がありません。
多様性への理解と受容
SNSやオンラインコミュニティを通じて、幼少期から多様な価値観や文化に触れてきたため、ジェンダー、セクシュアリティ、文化的背景の違いを自然に受け入れる傾向があります。この多様性への理解は、職場でのインクルージョンや社会問題への意識の高さにもつながっています。
ミレニアル世代の主要なキャリア課題
1. 企業への帰属意識の低さと転職志向
数値で見る現実 :2019年のデロイト調査では、約50%のミレニアル世代が現在の勤務先での就労期間を「2年以内」と回答しており、企業への帰属意識が著しく低い状況が明らかになっています。また、70%が「今の会社にとどまりたい」と望む一方で、64%が「昇進や異動まで2年未満しか待てない」と回答する矛盾も見られます。
背景にある価値観
- キャリアアップへの強い欲求
- 成長機会への飢餓感
- 変化を恐れない積極性
- 組織への過度な依存への抵抗感
2. ワークライフインテグレーションへの志向
従来の概念を超えた働き方観 :ミレニアル世代は、単純なワークライフバランスを超えて、仕事とプライベートの境界線を取り払う「ワークライフインテグレーション」を求めています。仕事とプライベートを切り分けない考え方を支持し、自分らしい生き方の模索を続けています。
プライベート重視の傾向: 10代・20代のミレニアル世代では「仕事よりもプライベートを重視する」傾向が強く、従来の「仕事中心」の価値観とは明確に異なる姿勢を示しています。
3. 長期的キャリアビジョンと現実的な不安の両立
矛盾する特徴 :ミレニアル世代は長期的視点でキャリアを考える一方で、世界的に半数以上が65歳以降も働くと想定(日本では72%)し、27%は70歳以降も働く(日本では46%)と考えています。しかし同時に、不安定な収入や不確実な将来への懸念も強く持っています。
スラッシュキャリアへの関心 複数の仕事を掛け持ちしながら多方面で活躍を目指すスラッシュキャリアやギグエコノミーに興味を持つ一方で、収入の不安定さを懸念する複雑な心理状態があります。
4. 成長への強い欲求と即効性の期待
積極的な成長志向 :企業に求める要素として「キャリアアップの機会」「社会への貢献」「柔軟な勤務体制」を重視し、自身の成長・キャリアを最優先事項として考えています。
短期での成果を求める傾向 :昇進や異動まで64%が2年未満、35%が1年未満しか待てないと回答するように、成長への強い欲求と同時に即効性を求める特徴があります。
効果的なミレニアル世代キャリア支援アプローチ
1. 多様な価値観を前提とした個別化支援
世代内の多様性への理解: 三菱総合研究所の研究によると、ミレニアル世代は「価値観の多様化が進み、同じ世代の中でも明らかに異なる考え方や行動特性を持つグループが混在している」ことが最大の特徴です。一般的な世代論が通用しにくい世代として認識し、個別化された支援が必要です。
セグメント別アプローチ
- 積極派(約20%):出世意欲と起業意識が強く、同時に家庭生活も重視
- 安定派:従来型の安定志向を持ちつつ、柔軟性も求める
- 体験重視派:キャリアよりも豊かな体験を優先
- ライフコース多様派:特に女性において、独身・DINKS・DEWKS・専業主婦などライフコースによる価値観の違い
2. 体験価値を重視したキャリア支援
経験の意味づけ支援:ミレニアル世代は体験価値を重視するため、単なるスキル習得ではなく、経験から得られる意味や価値を明確化する支援が効果的です。
具体的支援方法
- 職務経験の「体験価値」の言語化
- プロジェクト参加の学びと成長の可視化
- 失敗経験も含めた経験の価値再評価
- SNSでシェアしたくなる成長ストーリーの構築
3. 成長機会の具体化と加速化
短期・中期・長期の目標設定 即効性を求める特性を活かし、短期間での成長実感を提供しながら、長期的なキャリアビジョンとの接続を図ります。
成長支援の実践手法
- 3ヶ月スパンでの目標設定:短期間での成果実感の提供
- スキルの可視化:習得スキルのポートフォリオ化
- メンタリング制度の活用:成長機会の積極的創出
- 社外ネットワーキングの支援:多様な成長機会の提供
4. ワークライフインテグレーション支援
境界線のない働き方の設計: 従来のワークライフバランスを超えた、統合的な生活設計を支援します。
統合型ライフデザインの要素
- 仕事とプライベートの相乗効果の創出
- 副業・複業を含めた多面的キャリア設計
- 柔軟な働き方制度の戦略的活用
- ライフステージ変化への適応戦略
5. デジタル活用とSNS感覚の支援
ITリテラシーを活かした支援手法
- オンライン面談とチャットでの継続的コミュニケーション
- キャリア管理アプリやデジタルツールの積極活用
- SNSを活用した情報収集・発信スキルの向上
- オンライン学習プラットフォームの効果的活用
組織・企業への提言
ミレニアル世代が求める職場環境
重視される要素(優先順位)
- 報酬(88%):適正な評価と報酬体系
- 休暇(78%):十分な休暇制度と取得促進
- 福利厚生(75%):多様なニーズに対応した制度
- 安定(68%):雇用の安定性
- 柔軟な働き方(61%):時間・場所の自由度
企業が整備すべき制度・環境
成長機会の提供
- 定期的な昇進・異動機会の創出(2年以内のサイクル)
- 社外研修や学習機会への積極的支援
- プロジェクトベースでの多様な経験機会
柔軟性の確保
- フレックスタイム制度の充実
- リモートワーク環境の整備
- 副業・複業の許可と支援体制
多様性の推進
- インクルーシブな職場環境の構築
- 多様な価値観を受け入れる企業文化
- 社会貢献活動への参加機会
実践的な支援ツールと手法
ミレニアル世代専用キャリア支援シート
効果的な質問項目
- 「この経験から得た最も価値ある学びは?」
- 「2年後にどんな新しいスキルを身につけていたい?」
- 「仕事とプライベートをどう統合させたい?」
- 「どんな社会貢献を通じて成長したい?」
成長可視化ツール
スキルポートフォリオの作成
- 技術スキル、ヒューマンスキル、経験価値の三軸評価
- 四半期ごとの成長記録とフィードバック
- SNS感覚での成果共有とピアレビュー
ネットワーキング支援
多様なコミュニティとの接続
- 業界横断的な勉強会・セミナーの紹介
- オンラインコミュニティへの参加支援
- メンター・メンティー制度の活用
まとめ:多様性を活かす個別化支援の実現
ミレニアル世代のキャリア支援は、世代内の多様性を理解し、個別化されたアプローチを提供することが最も重要です。彼らの「成長志向」「体験重視」「多様性受容」「統合的生活設計」という特性を理解し、従来の画一的な支援から脱却する必要があります。
今日から実践できるミレニアル世代支援
- 価値観の多様性を前提とした個別ヒアリングの実施
- 短期間での成長実感を提供する目標設定
- 体験価値の言語化と意味づけ支援
- ワークライフインテグレーションの具体的設計支援
ミレニアル世代の多様で複雑な価値観を理解し、彼らの成長欲求と統合的生活設計を支援することで、次世代の職場を担う人材の可能性を最大限に引き出していきましょう。
企業と働く人の双方が幸せになるためには、人事評価制度や社内キャリア制度の見直しなどを組織に提案する事もキャリアコンサルタントの重要な仕事です。